久しぶりに日帰り弾丸旅行の虫が疼きだした金曜夕方、以前からドライブしてみたかったPCH (Pacific Coast Highway) に狙いを定め、翌朝のチケットを予約した。
LAとサンフランシスコの間には5号線と101号線と言う二つの立派なフリーウェイがある。 PCH もこの2都市を結んではいるものの、ほとんどが片側1車線の対面通行の道路。 それでも 「カリフォルニア州道一号線」、の誇りだけは忘れていない。
さて今回のツアー概要はこんな感じだ。
シャコタン号で朝4時にアパートを出発 → LAX 6時発のフライトでSFOへ → レンタカーで朝8時にサンフランシスコを出発 → PCHをひたすら南下 → 夕方LAXへ戻りレンタカー返却 → シャコタン号でアパートへ。
レンタカーでは700Kmほどドライブするので、岡山から東京まで国道2号線と1号線のみを走って帰ってくる、というイメージが近いかもしれない。
レンタカーはこいつだ。 VWジェッタ。 長時間運転するのでシートのしっかりした車種にしたかった。 レンタカーのセレクションでこいつが1台残っていることを発見して思わず指を鳴らした。
実際12時間走っても全くお尻が痛くならなかった。
旅には良い相棒が必要なのである。
さてSFO(サンフランシスコ国際空港)から海沿いのPCHへ出るには峠道を超えなければならない。。 ここがその入り口なのだが、艶めかしいカーブを描きながら深い森の中に消えてゆく様に気分が高揚した。
山を越えるとあっけなくPCHに合流した。 こんなローカル道がどうして Pacific Coast Highway なんてシビレるニックネームをもらいしかも人気があるのか、ここを走っている限りでは想像もつかない。
だけど数時間後にはその訳が痛いほどわかることになる。
それにしても寒い。 気温10℃。 寒流が浜へダイレクトに突き刺さっているのか、まるで日本海側の冬のようなイメージだ。
しばらく走るとさびれた灯台に辿り着いた。 Pigeon Point という名前らしい。
この古臭さと言い雲の様子と言い、白黒写真素材にはピッタリじゃないか。 (最初の写真がそれ。)
3時間ほどでモンタレー(Monterey)にとうちゃこ。 港町だ。
まだ11時前だったけど朝が早かったのでお腹が空いた。 桟橋にいくつかあった観光客向けの店でクラムチャウダーを仕入れ、飛び交うカモメを見ながら食べた。
それにしても気温は全く上がらずこれを食べても体が温まらない。 港の様子をもう少し見たかったけど、早々にジェッタへ戻り先を急ぐことにした。
モンタレーから30分ほど南下するときれいに晴れ上がってきた。 これぞカリフォルニアのイメージであるが、実際には特に海岸は寒くて霧がでることが多いって、日本人にはあまり知られていないように思う。 でも一旦晴れると日差しは強い。 青い目の人はもちろん、茶色い目の自分でさえサングラスが必需品になる。
さて気持ちの良い天気になってきただけでなく、景色もダイナミックになってきた。 この先の道を目で追うと崖に沿って上っているのがわかる。
ついには思わず息をのんでしまうポイントに来た。 ガラタパ州立公園内の展望地である。
荒々しい崖、ダイナミックも優しさを感じる山肌のコントラストに思わず声を失った。
ここを代表に、素晴らしい景色のビューポイントが沢山ありすぎ何度も車を止めることになってしまった。 先は長いのになかなか前進させてくれない。 グレートPCH。 ただ素直に感激するしかない道だった。
坂を上りきったところで先ほどの撮影ポイントを振り返ってみた。 前から見ようが後ろから見ようが素晴らしい景色に変わりはない。
それにしてもよくもこんな道を作ったものだ。 道中ほとんど iPhone は圏外だったので、誰も住んでいない、つまりは住人のための道ではない。 あそこに見える橋は1932年の完成とのことで、景気高揚のためにニューディール政策の一環で作られたのかもしれない。
想像してみてほしい。 こんなところを何時間も走るんだぜ?
あまりのスケールに、自分が今どこにいてどこに行こうとしているかなんて、どうでも良くなってきた。
それでも何事も永遠には続かないものだ。 徐々に変化して周囲はいつの間にかフラットな景色に変わってきた。 単調な道だけど、さっき木陰で20分仮眠したおかげで眠くはならない。
ここからほどなく、本日いくつ目かわからないほどの 「Vista Point」 の看板を見つけた。 そのまま通り過ぎようとしたのだけど、駐車場には沢山の車が停まっている。 なにか名物があるのかもしれない。 気になってウィンカーを点灯させた。
ドアを開けると潮の香りが全くしない。 代わりに脂のにおい、例えるならば革ジャンや野球のグローブに塗る油を強くしたような。 そうだ、子供のころに飲んだ鯨汁に入っていた鯨の脂身の香りと同じだ。
匂いの正体はこいつらだった。 浜辺でくつろぐ何百頭ものゾウアザラシ! この浜が住処になっているのだろう。
これだけの数が平和に生きていられるということは、海も豊かに違いない。
もう少し生態を観察したかったが、脂の匂いが鼻につき10分ほどで退散した。
あちこちに放し飼いで飼育されている牛を見たが、中にはシマウマがいる牧場も。
PCHと交差する道が少しずつ増えてきて、久しぶりに人の気配を感じ始めたころ、海に浮かぶ大きな岩が見えてきた。 モロベイと言う街のモロロックと呼ばれる岩らしい。 この大きさで一枚岩と言うのだから近くで見たらさぞかし迫力があるかと思ったが、実際にはこの辺りから見たほうが不思議さがあって面白いと思った。
その後PCHはサンタバーバラの葡萄畑へ。 ようやく知っているところに戻ってきた。 知っている、と言うだけでもう長い旅から帰ってきた感覚になってしまう。 実際にはLAXまであと2時間以上ドライブしないといけないのだけど。
最後の休憩はガヴィオータ州立公園。 サンフランシスコを出発した時と同じような冷たい海風だけど、海水浴を楽しむ人がいた。 寒がりの自分には無理だ。
その後マリブを通り無事にLAXでレンタカーを返却。 駐車場でシャコタン号に乗り換えて帰宅した。
レンタカーでの走行距離が464マイル。 シャコタン号でのLAX往復が80マイル。 合計で544マイル=870Kmを走行したわけだけど、疲れはさほど感じなかった。 大半が対面通行の道だったことを考えるとちょっと驚きである。
疲れを感じる暇がないほど素晴らしいドライブだったのだろう。 PCHに感謝。
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